2017年5月6日土曜日

ピックアップ・レビュー/DiMarzio(ハムバッカー)編②

ピックアップ・レビュー/DiMarzio(ハムバッカー)編①の続きです。


DP163 『Bluesbucker』

P-90のサウンドを再現するハムバッカーサイズのPUです。
音を拾うのはアジャスタブル・ポールピース側のみなので、本来ならシングルコイル(スタックタイプ)として扱うべきなのですが、まぁハムバッカー「サイズ」としてまとめた方が話が分かりやすいと思うので。

あまりP-90の音に詳しくないのですが、ちょっと違うかな~と。
歪みやすく、ハムバッカーに近い音圧があります。
その歪みも濁った感じなのですが、これはこれで泥臭くて使える音だと思います。

少しでもP-90に近い音が欲しければ、アジャスタブル・ポールピースを「内側」に向ける形でマウントするのがセオリーです。


DP165 『Breed Neck』
DP166 『Breed Bridge』

JEMでレスポールの音を出すのが目的ということで、かなり低~中域が出ます。

この低~中域とアルニコⅤマグネットのピーキーなアタックが組み合わさって、ドスのきいた立ち上がりをします。
レスポール系の重いギターにマウントすると、低域が詰まるので相性は悪いです。
じゃあ軽ければ良いかというとそうでもなく、あまり音に厚み(というか粘り?)がないせいか、ヌケの良いボディにマウントするとコシの無いサウンドになります。
バスウッドやソフトメイプル、マホガニーといった材のボディとの相性が良いんじゃないかと思います。

あと、24フレット/ダブル・カッタウェイを22フレット/シングル・カッタウェイのサウンドに近付けるためか、フロント側は普通の”フロント用”PUより出力があります。
低域もかなり出るので、こちらもマウントするギターを選びます。

良くも悪くも、DiMarzioのこだわり・作り込みを感じるPUです。


DP190 『Air Classic Neck』
DP191 『Air Classic Bridge』

エアバッカー・テクノロジーを採用したAirシリーズです。
このシリーズの特徴は、速い立ち上がりと長いサスティン、そしてセパレーションの良さです。

普通はクランチくらいからエッジやバイト感が出てくるのですが、Airシリーズはクリーンの時点で高域のレスポンスの良さを感じます。
クランチも歪み成分が多い割にキレがあります。

で、歪ませるとこの高域の立ち上がりの良さが仇になるのか、コシの無い音になります。
中・低域に締まりが無い…というよりは、ホロウボディ的な「ゲロ~ン」というルーズさ(良く言えば空気感)が目立ちます。
アタックが潰れないので、速いフレーズには向いていると思います。

ここまで読むと高域が強調されたDiMarzioらしいサウンドと思うかもしれませんが、この『Air Classic Neck/Bridge』、とても地味です。
旧DP103『PAF』のエアバッカー版なので、まぁ当然なのですが。

パワー不足の反面、低いゲインでの使用には適性があるので、セミアコでクリーン~クランチ中心の音作りをしたい場合等に役立つかもしれません。


DP192 『Air Zone』

DP155『Tone Zone』のエアーバッカー・バージョンです。
Tone ZoneのトーンにAir Classicの特徴を加えたサウンドですが、「Tone Zoneの音が好きな人」にはちょっとアレかな~と。

というのも、Tone Zoneの1番の特徴である低域の迫力がありません。
トーンは似ているのですが、密度が全く違います。
Tone Zoneのフロント用としては、正直どうかと思います。

コレ自体の音は悪くないです。
音圧が無い代わりにその隙間で暴れてくれるので、表現力がある割にはピーキーじゃありません。
フロントでのトーンは「甘い」より「太い」という表現が合います。


DP193 『Air Norton』

DP160 『Norton』のエアーバッカー・バージョンです。
Airシリーズについてやや否定的な文章が並びましたが、コレは優秀です。

Air Classicよりもパワーがあり、ディマジオらしい華やかなトーンだと思います。
意外とフラットで隙間が多く、やや高域の密度が高いかな、という印象です。
セパレーションも良いので、ハイゲイン+速いフレーズでも問題なくこなしてくれます。
パワーはやや抑え気味ですが歪みのノリは良いので、ピッキングによる表現の幅も広いです。

フロント/リア両方で使えますが、どちらかというとフロントで重宝します。
DiMarzioのラインナップ内で、通常のポールピースの形状でフロント適性があるのはこのAir NortonかPAF系くらいしかありません。
Tone Zoneや他のAirシリーズ等、リアにハイパワー/モダンなトーンのPUを乗せた場合、ルックスのことを考えるとフロントはほぼ自動的にコレになるかと思います。


DP207 『D Sonic』

低域が出るPUではなく、低音がよく聞こえるPUです。
Tone Zoneのようなトーンを期待すると肩透かしをくらいます。

ドンシャリ、ガリガリです。ゴリゴリではないと思います。
余計な中低域を拾わないので、確かにチューニングを下げてもヌケが良いです。

Evolutionとは違う、刺々しく攻撃的なサウンドです。
音圧はそこそこなのに存在感はあるので、意外と器用に立ち回れるタイプなんじゃないかと。

それぞれのコイルで違う音域を拾うようで、マウントする向きによって音が変化します。
バーポールピースをブリッジ側にするとブライトになり輪郭がハッキリします。
チューニングを下げる場合は、この向きにするのがセオリーです。


DP211 『EJ Custom Neck』
DP212 『EJ Custom Bridge』

パワーの無いHumbucker From Hellという感じでしょうか。
PAF系の枯れは感じません。

やや薄っぺらく立体感が無いので、ソリッドボディに載せてグレッチのカントリー・ジェントルマンのサウンドが出せるかというと、どうかな~と。
むしろAirシリーズの方がホロウボディっぽい奥行/空気感があります。

歪ませれば歪ませるほどわざとらしい音になるので、クリーン~クランチ専用だと思います。
繊細なプレイより、コードをガシャガシャ鳴らす方が似合います。


DP213 『PAF Joe』

公式の説明通り、DP151『PAF Pro』をPAFに寄せた感じです。
良くも悪くも無難な音です。

出力は低い方なので、ほぼフロント用という認識で良いと思います。
少々高域が甘い気がしますが、そのおかげかクリーンでも歪ませても扱いやすいです。

シルバーの六角スクリュー・ポールピースでフロントに適性があるものが少ないので、コレを選ぶ人も多いでしょう。
Air Nortonに似た立ち位置にあるPUです。
シルバー・ポールピースのPAF Proがあれば、選択肢が広がるんですけどねぇ…


DP215 『Evo 2 Bridge』

扱いやすいEvolutionです。
高域重視だったトーンの偏りを緩やかに、センシティブなレスポンスもやや穏やかにチューンされています。
スケール感はEvolutionより小さいですが、低~中域の音圧はEvo 2が上です。

トーンはBreedとEvolutionの間にあるのですが、その他のキャラクターはほぼEvolutionです。
マグネットが同じセラミックなので、そのおかげでしょうか。


DP216 『Mo' Joe』

PAF Joeのリア・バージョンか…と安易な想像をしていたのですが、大間違いでした。
DiMarzioでも屈指の暴れん坊です。

Evolution並みにセンシティブで歪むPAF Proという感じでしょうか。
FREDよりも荒っぽく躍動感があります。

パワー自体はそんなに高い方ではないのですが、全レンジの押しが強いのでスペック以上にパワフルに感じます。
アルニコⅤ特有のピーキーさが強調されているので、少し弦とポールピースを離し気味にセッティングすると扱いやすくなります。

PAF Joe(フロント)と組み合わせる場合は、サウンドバリエーション優先だと割り切る必要があると思います。
キャラクターが全く異なるので、普通の「フロント/リアセット」とは違います。
個人的にはPAF Proと組ませたいのですが、ポールピースの色が合わないんですよねぇ…


ピックアップ・レビュー/DiMarzio(ハムバッカー)編①

ラインナップを押さえきれていないのですが、DiMarzioのハムバッカーのレビューです。 DiMarzioのピックアップは倍音のコントロール等かなり計算された音作りなので、マウントするギターによって音/相性の変化が大きいイメージがあります。 ラインナップ変更やモデルチェンジによるトーン変更も積極的に行っています。 ...