2016年8月22日月曜日

ピックアップ・レビュー/Seymour Duncan(ハムバッカー)編①

2009年以前のラインナップですが、ほぼ網羅していると思います。

自分で使ったもの、作ったギターに乗せただけのもの、多少温度差はあると思いますが、極力他のPUの名前を挙げて比較・評価をしやすくしているつもりです。




SH-1n/SH-1b 『'59 model』

スタンダードなビンテージサウンドのPUだと思います。

無駄な倍音が無いスッキリした音像ですが、中域はそこそこ密度があります。
クリーンは大人しく、歪ませるとバイト感が出てきます。
Gibsonの57 Classicをスムーズにした感じでしょうか。
『枯れ』はそこまで強調されていません。

密度がある中域→ハイゲインで使っても薄っぺらくならない
バイト感がある→弾き方によっては派手な音も出せる
基本的には優等生なビンテージ系ですが、優秀なオールラウンダーです。

フロント用(SH-1n)とリア用(SH-1b)で若干音が違います。
リア用の方が少しパワーがあってピークが下に寄るので、ハイゲインなPUと組み合わせるならこちらをフロントにマウントした方がバランスが良い場合があります。


SH-2n/SH-2b 『Jazz model』

個人的に、フロントPUの中で1番好きです。

密度が高く硬めで、クリーンはもちろん歪ませてもワイドレンジで芯のあるサウンドです。
SH-1『'59 model』よりも輪郭がはっきりしていて、特にクリーントーンの存在感に差があります。
低域はアタックだけ「ゴツン」と鳴ってすぐに減衰するので、速いフレーズでも音が潰れません。

人によっては少々くどいと感じるかもしれませんが、そのぶん泣くときは泣いてくれます。
泣きっぱなしにならないのも良いところ。
隣り合う弦を一緒に鳴らした時、歪みが散らからずにグッと締まる感じで力が入る?のが気に入っています。

ちなみにリアにマウントした場合は、思いの外骨のあるサウンドです。
Gibsonの『Burstbucker TYPE2』から枯れ等のビンテージテイストを取り除いた感じでしょうか。
出力は低いですが線の細さは無く、『シャープ』というよりは『ブライト』なキャラクターです。


SH-3 『Stag Mag』

タップするとシングルコイルそのものの音が出せる、という体のハムバッカーです。
が、肝心のハムバッカーとしてのサウンドは薄っぺらくてイマイチですね。

シングルコイルとしては、フロントではそこそこ使える印象です。
ややパワーを抑えた、素直なビンテージ系サウンドです。

ハム/シングル共にリアで使うには非力(故にフロントで組み合わせるPUが無い)かと。
フロントでシングルコイルメイン、時々ハムを使いたいという人ならアリだと思います。


SH-4 『JB model』

僕はコイツが大嫌いなので、あまり参考にしないで下さい。

とにかく、設計が古い。
細かい変更はあったらしいのですが、それでも古いと思います。
質の良いハイゲインアンプが少ない時代なら、こういう高密度中域モリモリハイゲインPUが重宝されるのも頷けます。

同じく古いハイパワー系PUといえばDiMarzioのSuper Distortionがありますが、こちらはワイドレンジかつ倍音に適度な隙間があるので、今でも通用するキャラクターだと思います。

ピッキングの強弱に対する反応は優秀なので、単音フレーズの弾き心地は良いと思います。
しかしピッキング/フィンガリングノイズ等、細かい音(超高域)は無視されるので、コードやリフのフレーズは単調になりがちかと。

高域は出るのですが、密度が低くボディ材他の影響を受けやすいです。
載せるギターによってかなり変化するので、レビューの本等で評価に一貫性が無いのはこれが理由だと思います。
逆に密度が高い中域は主張が強く、どんなギターに載せてもJBの「クセ」として語られる部分です。
このキャラクターを気に入るかどうかで、はっきり好みが分かれるPUです。


SH-5 『Duncan Custom』

個人的に1番好きなリアPUです。

SH-1『'59 model』のパワーアップ版という体ですが、どちらかというとSH-2『Jazz model』のハイゲイン版だと思っています。
SH-1『'59 model』のハイゲイン版は、サウンド的にも相性的にもSH-14『Custom 5』でしょう。

SH-2『Jazz model』の文章を借りれば、
”密度が高く硬めで、クリーンはもちろん歪ませてもワイドレンジで芯のあるサウンドです。
SH-4『JB model』やSH-14『Custom 5』よりも輪郭がはっきりしていて、特にクリーントーンの存在感に差があります。”
という感じでしょうか。

ハイパワー、フルレンジ、クリーン、抜けやエフェクトのノリが良い反面、キャラが薄く淡白、フラットで音圧やコシ・粘りを感じ辛いのも事実です。(無いのではなく、出し辛い)
高いレベルでまとまっていながら器用貧乏な感じは、ESPのLH-200に似ていると思います。
どこか『国産』っぽい雰囲気です。

SH-1『'59 model』ほどバイト感は無いのですが、ピッキング・ハーモニクスはコントロールしやすいです。
真顔で何でもやってくれる超優等生です。


SH-6n/SH-6b 『Duncan Distortion』

SH-4『JB model』やSH-5『Duncan Custom』はパワーのあるビンテージサウンドですが、これは別物です。

名前の通り歪ませて本領を発揮しますが、クリーンも悪くありません。
SH-4『JB model』よりクリアで、強くピッキングするとサチュレーションが効いた太いクリーンになります。
クランチは一定の歪みで歯切れよく弾くフレーズよりも、強弱を付けたアルペジオなんかに向いていると思います。(これはSH-4『JB model』も同じ)
ディストーションはクセがなく、とにかく懐が深いです。
ただ歪みやすいだけではなく、倍音が豊かでピッキングにしっかり反応してくれます。

早い話が、SH-4『JB model』を現代的なトーンにアレンジした感じでしょうか。
コイルが同じでマグネットが違うだけ(SH-4…アルニコV、SH-6…セラミック)という噂を聞いて、妙に納得した覚えがあります。

ちなみにフロント用のSH-6nは、リアにも適性があります。
トーンは非常にブライトでスムーズ、出力もミドルパワーで他のラインナップと被らないおいしいポジションです。
なんでも、これが今は欠番になっている『SH-7』だったらしいですね。


SH-8n/SH-8b 『Invader』

見た目通りの音です。
どう弾いてもローが響き続けます。

質量が無いギターでも、PUの地力で何とかしてくれます。

低域がベースの邪魔をするので、5/6弦ベースで音域を離した方が共存し易いと思います。


SH-10n/SH-10b 『Full Shred』

ダンカンっぽくない高域が特徴です。
ビンテージらしさは無いです。

リア(SH-10b)は、前述のSH-6『Duncan Distortion』のフロント用(SH-6n)に近い印象です。
ややアタックがヒステリックだと思います。

フロントはミニハムみたいな音です。
極端な言い方をすれば、キレは抜群、コシは皆無という感じです。


SH-11 『Custom Custom』

まず、ダンカン公式のトーンチャートほど他とかけ離れた音ではないと思います。

マグネット違いのSH-5『Duncan Custom』よりは、SH-6『Duncan Distortion』に近い弾き心地です。
SH-4/5/6をパワフルと表現したら、SH-11はホットという感じでしょうか。

クリーンからクランチはSH-5『Duncan Custom』より膨らみがあります。
そこからさらに歪ませると、アルニコⅡ独特の線の細い倍音が存在感を顕にします。
アルニコVみたいにバリバリ暴れず一貫性があるので、コントロールはしやすいです。
低域がスッキリしていてアタックもスムーズです。

DiMarzioのEvolutionをビンテージっぽくするとこんな感じになると思います。
ハイパワー系でマグネットがアルニコⅡのピックアップって珍しいですよね。


SH-12 『George lynch Screamin' Demon』

SH-10『Full Shred』の中低域をビンテージに寄せつつ、高域をアグレッシブにした感じです。
派手ですが、スケール感はSH-4/5/6より二回りは小さいです。

通常とは逆に、六角スクリューポールピースをブリッジ側にしてマウントすると、キャラクターがかなり変わります。
また、ラインナップが少ないミドルパワーでヌケも良いので、フロントにマウントしてみるのもアリです。


SH-13 『Dimebucker』

当然と言えば当然なのですが、Bill Lawrence L-500系の音にダンカンテイストを加えた音です。
Bill Lawrence特有の高域のクセやコンプレッション感が薄く、よりアメリカンというか、開放的なイメージです。

低域はゴリゴリでタイト、高域もしっかり出るのですが、ワイドレンジでは無いです。
ピーキーな倍音が出て来ないので扱いやすい部類に入ります。
本家よりナチュラルです。

見た目とカタログスペックの割には『パワフル』ではないです。
それでも…というか、やはりアグレッシブで『ラウド』という表現が似合います。


SH-14 『Custom 5』

SH-5『Duncan Custom』のところで書きましたが、SH-1『'59 model』のハイゲイン版です。
パワーはあるのですが、SH-1『'59 model』と同じくストイックでクールな印象です。

SH-11『Custom Custom』より締まりが良く、骨格がしっかり見えます。
しかしSH-5『Duncan Custom』ほど骨太ではないです。

倍音がスッキリしていて歪み感が少なく、あまり暴れないのですが、常に狙ってピッキングハーモニクスを出したい人にとってはコントロールしやすいタイプです。
タイトで潰れないアタック、滲まず長いサスティンと、非常に高いレベルでまとまりが良いハムバッカーです。

個人的にはフロントポジションにも適性があると思います。
24フレットモデルやフロントPU周りの質量に乏しいギターを使っている人は、ぜひ試してみて下さい。


SH-55n/SH-55b 『Seth Lover model』

まず音の感想よりも、周りの評判が非常に良かった事が印象に残っているピックアップです。

SH-1『'59 model』の現代的にアレンジされた部分を消した感じでしょうか。
レンジが下に移動して密度も下がっています。
APH-1『Alnico II Pro』よりもGibsonの『Burstbucker TYPE1』に近いニュアンスです。

余計な厚みを感じるレンジは無く、やや開放的な雰囲気があります。
それが理由かは分かりませんが、クリーンは濁らずキレイに鳴ります。

同社のAQ-HM『Antiquity Humbucker』と比べると、ダンカンらしい扱いやすさが残っています。
SH-4『JB model』のパワーを下げたPUを作るとしたら、こんな感じの音になるんじゃないでしょうか。


ピックアップ・レビュー/Seymour Duncan(ハムバッカー)編②


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