2016年9月18日日曜日

ピックアップ・レビュー/Gibson(ハムバッカー)編

値段がアレなので、なかなか手を出し辛いGibsonピックアップのレビューです。



490R/490T

ビンテージな枯れた雰囲気はありません。
バランス的にはダンカンのAPH-1『Alnico II Pro』に近いでしょうか。
APH-1『Alnico II Pro』がダーク/クリーミーなら、こちらはブライト/プレーンという感じです。

出力は抑え気味、低域がこもらず高域がしっかり出るので、アンプ側で音作りをしやすいです。
リプレイスメントPUとしては個性がありませんが、ギター本体のタイプ/個体差等に関わらずそれなりの音を出せるので、メーカー純正でマウントされるPUとして優れていると思います。


498T

490Tの高出力バージョンです。
良い意味で品が無くて、かなり好みです。

中域がブーストされた代わりに上と下に隙間があり、490Tと比べると暴れます。
ダンカンのAPH-2『Alnico II Pro SLASH』より開放的で、SH-PG1『Pearly Gates』よりもスッキリしています。
膨らみはあるのですが、どこかの帯域が詰まるようなこともなく、スムーズに音が飛び出します。

枯れは無くモダンなトーンなので、扱い易いですね。
ややディマジオっぽい雰囲気もあります。

というのがカバー無しでの感想です。
カバーを付けるとエッジが丸くなり、輪郭だけビンテージ系のいかにも量産タイプっぽい音になります。
特にレスポールはカバー付きとの相性が良くないと思います。
SG等、軽いボディなら多少改善しますが…

ルックスにこだわらないなら、カバーを外して使うのをおすすめします。


496R/500T

ハイパワーPUのお手本になって良い一品だと思います。

ドンシャリです。
ダンカンSH-6『Duncan Distortion』の中域の膨らみを抑えた感じでしょうか。
セラミック・マグネット独特の低域の粘りと高域の歯切れの良さを持ち、中域は暴れず充分なゲインがあります。
余計な厚みが無いので、ヌケも音の分離も良いです。

このバランスの良さは、EMG-81に近いものがあります。
繊細な音楽をやれと言われると苦しいのですが、GibsonのPUラインナップ中で最もエフェクターの乗りが良く、クリーンからハードな歪みまで一貫して適性を見せます。


57 Classic

名前ほどビンテージっぽい音ではないと思います。
ダンカンのSH-1『'59 model』をゴツくした感じです。

倍音が薄いので、実音が強くゴツゴツしていて枯れも感じません。
歪みも弱いのですが、ひょっとするとこのゲインの低さがビンテージ要素なのかもしれません。

低域・高域共によく出る(特に高域)のですが、レンジ自体は狭いと思います。
コンパクトで立ち上がりが速く、パンチのある音が特徴です。

スタンダードからは若干外れた音だと思うのですが、「これがクラッシックトーンだ」と言って納得させられるあたり、さすがGibsonだと感心します。


57 Classic Plus

57 Classicのリアポジション用(パワーアップ版)です。
こちらの方が自然というか、スタンダードなビンテージサウンドに近いと思います。

出力はそんなに変わらないのですが、57 Classicよりもたくさん音が鳴る感覚があります。
倍音が増え、少しだけワイドレンジです。
相対的に実音は小さく聞こえますが、増えた音の分でフロント/リアのバランスをとる感じでしょうか。

クリーンの輪郭はややぼやけますが、歪みのヌケは良くなっています。
キレや粘り等、特筆すべき特徴は無いのですが、高いレベルでまとまっています。
相変わらず枯れはあまり感じないので、ダンカンのSH-14『Custom 5』の出力を下げるとこんな感じになりそうです。


Burstbucker Type 1

57 Classicが「ゴツゴツ」なら、これは「ガリガリ」です。
無駄な贅肉をそぎ落としたストイックで繊細なサウンドで、GibsonのPUの中で最も「枯れ」が強調されています。

クリーンは中域の膨らみが無いので、冷たくダークな雰囲気です。
歪ませると高域のバイト感が強調されます。
ダンカンのSH-1『'59 model』よりも高いレンジかつ強めの食い付きです。
サスティンは高域から先に減衰して中域の実音が残るので、短い割には音量が下がらず、少々太めの印象です。

骨格がしっかりしていて余計な音が出ないので分離は良いです。
立ち上がりが派手なので、手数が多いフレーズだとビンテージらしさは感じません。
逆にロングトーンは渋めの振る舞い、特にフロントの「泣き」は貫録を感じさせます。


Burstbucker Type 2

Burstbucker Type 1が「ガリガリ」なら、これは「ゴリゴリ」です。
Type 1の贅肉の少なさや枯れはそのままに、さらにガタイがデカく骨太なサウンドです。

出力は低いのですが、パワー感はシリーズNo.1です。
ダンカンSH-2『Jazz model』やSH-5『Duncan Custom』のような広いレンジとくっきりしたエッジで、中域は少なめに感じます。
Type 1ほど高域のバイト感は強調されていないのですが、低域の食い付き・立ち上がりはこちらが上です。

クリーンはType 1同様ダークなのですが、こちらの方が低域の音圧がある分圧迫感があるというか、閉塞的で緊張感があります。
歪ませると、シリーズ中で最もバランスがとれたクセの無いサウンドだと思います。
ギター本体のセットアップに敏感、そしてピッキングに非常に忠実なので、プレイヤー次第で様々な音が出せるピックアップです。


Burstbucker Type 3

Type 1/2とは若干毛並みが違います。
無理やり流れに乗ると、これは「グリグリ」でしょうか(適当)。

ハイライトは中域です。
アタックはType 1/2の間、中域の食い付きが良いのですが、ダンカンSH-4『JB model』やSH-6『Duncan Distortion』のように追従性に優れたタイプではなく、少々ルーズです。
サスティンもだらしなく膨らむことはないのですが、Bill Lawrence『L-500』やDiMarzio『Evolution』のように中域がクセのある伸び方をします。

低域も高域も、この中域に押されて大人しく感じます。
出力でType 2に勝るものの、パワー感に差が無いのはこれが理由だと思います。
低域・高域のような枯れが中域には無いのですが、極端に密度が高いわけではないのでハードに歪ませても潰れず、ビンテージ感を保っている印象です。

Burstbuckerシリーズとしては完全にリア用扱いなのですが、フロントでも使えます。
Type 1/2に比べるとヌケが悪くレンジもやや狭いですが、マウントの向き(前後?内外?)を逆にすると改善します。
DiMarzio『PAF Pro』に近いでしょうか、粘りと存在感がある少し鼻にかかったような中域が魅力的です。


Burstbucker Pro - Neck/Bridge

Burstbucker Type 1/2/3はマグネットがアルニコⅡで、ProはアルニコⅤです。
ハウリング対策のポッティングもされています。
(フロントがType 1、リアがType 2と同等の出力だそうです)

ということで、普通の音です。Burstbuckerらしさは無いですね。
残されたBurstbuckerシリーズの特徴として「2つのコイルターン数の差によるエッジが立ったトーン」がありますが、そもそもアルニコⅤはエッジが立つので恩恵は少ないと思います。
実際、マウントの向きを入れ替えてもType 1/2/3ほど大きな変化はしませんでした。

DiMarzioの『PAF Classic』が近かったと思います。
ビンテージらしさはそこそこで、57 Classicより柔らかくレンジが広いです。
サスティンはGibsonのラインナップ中でも短い方かと。

ハウリングに強く、クセが無いので音作りが楽で実用性は高いです。
しかし、キャラクターは薄いです。
悪い意味で品が良く、器用貧乏だと思います。
他のメンツがキャラが濃いので、もっと優等生で使いやすい(Gibsonの)PUが欲しい、という人用と言って良いと思います。


Dirty Fingers

500Tより「古い」音です。
DiMarzioのSuper Distortionに近い解像度が低い(粒が粗く、コンプレッションが強い)歪み方をします。

クリーンはダンカンのSH-4『JB model』に似ています。
薄く柔らかい低域・高域と飽和感が強い中域で、決してヌケは良くありません。
しかし、セラミックマグネットらしい均一で深い歪みは、SH-4『JB model』よりスッキリしていてモダンなトーンです。
中途半端にビンテージ感を残されるよりも、これくらいしっかり歪んでくれると、逆に音作りはしやすいです。

エッジが強調されているタイプではないので暴れる感じはしません。
しかし、他の弦と被った時の濁り方・爆ぜ方は、良い意味で古臭くて味があります。
キレイなピッキング/フィンがリングで単音フレーズを弾くよりも、ルーズなプレイに使うのが正解だと思います。

Gibsonのラインナップ中で最も出力が大きいので、まぁ間違いなくリアにマウントすることになるのですが、普通は何と組み合わせるんでしょうか?
個人的にはフロントにBurstbucker Type 3(リバースマウント)というのが、最も納まりが良かった印象です。


Tony Iommi Signature

黒魔術用です。
具体的にどんな音かと言うと、悪魔が召喚出来そうな音でしょうか。
ドンシャリで妙に立体感があり、やや奥まった場所から「デロデロ~ン」と何かが出て来る感じです。

低域も高域も太いのではなく、タイトでボリュームが大きいです。
中域はお飾りです。
重いレスポール等に載せた方が低域は出るのですが、御本尊(SG)のような軽いギターの方が中域の隙間が強調され、不気味さ・存在感が増します。

この立体感・空気感は、DiMarzioのAirシリーズに似ていると思います。
分離が良く、サスティンが低域から唸るように伸びるので、音数が少ないフレーズでも退屈しません。
速いフレーズになると、ピッキング時の低域の立ち上がりが弱いので「ゲロゲロ」とコシの無いサウンドになりますが、濁りが少なく耳当たりは良いです。

ポールピースが見えず、通常のワックスに加えてエポキシ樹脂を使った含浸をしているのも特徴的です。
バラシて中の構造がどうなっているのか見ておけば良かったな~と、後悔しています。

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