2016年8月23日火曜日

ピックアップ・レビュー/Seymour Duncan(ハムバッカー)編②

ピックアップ・レビュー/Seymour Duncan(ハムバッカー)編①の続きです。



SH-PG1n/SH-PG1b 『Pearly Gates』

とにかく豪快で粗削りなサウンドです。
SH-11『Custom Custom』のパワーを下げる代わりに、音の輪郭やスケール感を最大限に開放した感じです。

ベースとなっている音はSH-1『'59 model』やSH-55『Seth Lover model』に近いです。
濁りや滲みの無いローエンド/ハイエンドは維持しつつ、その間で派手な倍音をまとったミドルが暴れまわるイメージです。
このミドルは気まぐれで、適度に隙間がある飽和感を生みます。
ただフルレンジで太いだけではなく、ブライトでヌケが良い理由はここにあると思います。
「高域が太い」と言えば伝わるでしょうか。

SH-1『'59 model』よりもやや高くワイドなレンジでピッキングに反応し、ハーモニクスも多いです。
フロントでもSH-2『Jazz model』に負けない存在感があります。

キレも十分あるのですが、中域の『ハリ』については他の追随を許しませんね。
『テキサス』という表現がここまで似合うハムバッカーは他に無いと思います。


APH-1n/APH-1b 『Alnico II Pro』

『ブリティッシュ』、『ウェット』、『ウォーム』。
マグネットは上記SH-PG1『Pearly Gates』と同じアルニコⅡですが、正反対のキャラクターです。

SH-55『Seth Lover model』よりも密度があり、クリーン/歪み共にクリーミーです。
Gibson『Burstbucker TYPE1』のようなダークさはありません。
枯れや線の細さもなく、輪郭がしっかりしているので思いの外ヌケが良く、ビンテージテイストは薄い印象です。

低域は重心が低く安定感があり、高域も暴れないので、1音1音存在感があります。
アタックは暴れずスムーズ、サスティンが散らからず長く粘るのも特徴です。
リアがSH-11『Custom Custom』の場合、フロントはAPH-1nで決まりです。


APH-2n/APH-2b 『Alnico II Pro SLASH』

APH-1『Alnico II Pro』にSH-PG1『Pearly Gates』テイストを加え、一回りパワフルにしたイメージです。

キャラクターは薄くなりましたが、APH-1『Alnico II Pro』特有の気難しさが消えて扱いやすくなっています。
常に1歩引いた位置にいるのはAPH-1『Alnico II Pro』と変わらないのですが、こちらの方が立体感がある分ノリが良い印象です。

VanZandtの『TRU BUCKER』あたりと似ているでしょうか。
思慮深く、EMGとは一味違う緊張感を醸し出します。
出力はビンテージ系ですが、実はハードに歪ませた時に本領を発揮するタイプだと思っています。


AQ-HM-n/AQ-HM-b 『Antiquity Humbucker』

SH-55『Seth Lover model』がオリジナルな状態だとしたら、これはそれを経年変化させたもの…と勝手に解釈しています。

SH-55『Seth Lover model』の出力を削り、よりGibsonの『Burstbucker TYPE1』のようなダークな成分が増えています。
とにかく枯れていてデリケートです。
中~低域にかけて目立つ音像なのですが、単純に高域の成分が少ないと思います。
カバーを外せば、そこそこフラットになりそうです。

SH-1『'59 model』やAPH-1『Alnico II Pro』のような一貫性は無く、どちらかというとSH-PG1『Pearly Gates』の気まぐれさを含みます。
ただ、『暴れる』と表現するほどのパワーはありません。

ダンカンらしい扱いやすさは残されていないので、ストイックなプレイを好む人におすすめします。


Prototype JB

777個限定で発売されました。

マグネットはアルニコⅡらしいのですが、確かにSH-4『JB model』にSH-11『Custom Custom』のニュアンスを混ぜた感じです。
SH-4『JB model』ほどパワーはありませんが、開放的でヌケが良く、低域も素直に出ます。

APH-2『Alnico II Pro SLASH』をパワーアップしたら、こんな感じになると思います。
実際、リアにPrototype JB、フロントにAPH-2n『Alnico II Pro SLASH』で組み合わせた覚えがあります。

限定品で終わらせるのは、ちょっともったいない気がします。
普通に売っても良いんじゃないかと思います。


PATB-1n/PATB-1b 『Original Parallel Axis』

EMGとDiMarzio『Airシリーズ』を足して2で割らないレベルの変わり者です。
不自然なくらい、というか、不自然にサスティンが伸びます。

音もパーカッシブで異常に分離が良いので、ピアノみたいな音色になります。
出力はあるのですが、歪みは少なめです。


PATB-2b 『Distortion Parallel Axis』

PATB-1b『Original Parallel Axis』のパワーアップ版です。
しかし、どちらかというとこちらの方が普通のハイパワー・ハムバッカーに近い音だと思います。

PATB-1『Original Parallel Axis』よりもレンジが狭く、パーカッシブな成分が減って扱いやすくなっています。
サスティンはこちらの方が伸びます。
あまりに伸びるので、サスティナーを使っている気分になります。

どんなに歪ませても分離が良いので、逆に音圧は出せないタイプです。
リアとのバランスを無視すれば、フロント(ディストーション+ロングトーン専用)で使うのもアリだと思います。


PATB-3b 『Blues Saraceno Parallel Axis』

シリーズ中で、1番普通の音に近いですね。
同じく出力が低いPATB-1nには独特の硬さやコンプレッションがあるのですが、これは軽やかで開放感があります。

特にクリーンのカッティングでは、単純にエフェクターを使うのとは違う粒のそろい方を味わえます。

SH-2『Jazz model』のキャラクターをさらに強烈にした感じなのに、なぜリア用なのでしょうか?
フロントの方がはるかに高い適性があります。
ノーマルなPUと組み合わせても(見た目以外)違和感なく使えると思います。


ピックアップ・レビュー/Gibson(ハムバッカー)編


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